純一は制服に手を伸ばし、早くこの場を終わらせようとしていたが、心の中は焦りと羞恥でぐちゃぐちゃだった。
村田の視線が頭から離れない。
あの唇の端に浮かんだ小さな笑みと、曖昧で棘のある言葉が、彼のプライドを容赦なく抉っていた。
タオルを握る手には汗が滲み、指先が微かに震えている。
なんとか誤魔化せたはずだ――そう自分に言い聞かせようとしたが、村田の次の言葉がその希望を打ち砕いた。
「じゃあさ、先輩。ちゃんと確かめてみましょうよ。」
村田が突然そう言った。声は軽く、まるで何気ない提案をするような口調だったが、その言葉は更衣室の静寂に鋭く響いた。
純一の手が止まり、タオルを握る力が一瞬強くなる。
彼はゆっくりと振り返り、村田を睨みつけた。顔にはまだ赤みが残り、目には怒りと困惑が混じっていた。
「何!? お前、ふざけてるのか?」
声が裏返りそうになるのを必死に抑えながら、純一は拒否の意志をはっきりと示した。
確かめる?
そんな屈辱的な提案を、冗談でも受け入れるわけがない。
プライドの高い純一にとって、それは考えられない選択だった。
村田は純一の反応を見て、肩を軽くすくめた。
普段の従順な後輩らしい態度はそのままに、しかしその瞳にはどこか楽しげな光が宿っていた。
彼はタオルを手に持ったまま、純一から少し視線を外し、独り言のように呟く。
「まあ、そうですね。比べるなんて変な話ですよね。でも……」
と一拍置いて、彼は唇の端に再びあの小さな笑みを浮かべた。
「いまここでハッキリさせないと、さっき見たものを誰かに喋っちゃいそうだなあ(笑)」
その言葉は静かに、しかし確実に純一の耳に突き刺さった。
村田の声は軽いままだったが、その裏に潜む意図はあまりにも明確で、純一の心を冷たく締め付けた。
脅しだ。
これは脅しだ。
純一の頭の中で警鐘が鳴り響く。
村田が見たものを誰かに話されたら――水泳部のエースとしての地位、完璧なイメージ、全てが崩れ落ちる。
想像するだけで息が詰まりそうだった。
彼はタオルを握る手にさらに力を込め、村田を睨みつける。
「お前……何を言って!」
言葉がうまく出てこない。
怒りと恐怖が混ざり合い、声が震えていた。
村田はそんな純一を見て、ただ穏やかに微笑んでいるだけだ。
その笑みが、純一をますます追い詰めていく。
「いや、別に喋るつもりはないですよ、先輩。僕、そんな人じゃないですし」
村田はそう言って手を振ったが、その言葉に安心感はまるでなかった。
むしろ、彼の態度があまりにも余裕に満ちていることが、純一の不安を煽った。村田はタオルを肩にかけ、ロッカーに寄りかかる。
視線は純一から外れているが、その存在感は更衣室全体を支配しているようだった。
純一は唇を噛みしめ、頭をフル回転させる。
拒否すれば村田が本当に喋るかもしれない。
でも、自分のコンプレックスを見せるなんて絶対に嫌だ。
だが、このままでは――。
「待てよ」
純一は意を決したように声を上げ、村田を鋭く見据えた。
顔はまだ赤く、心臓は激しく鼓動しているが、ここで引くわけにはいかないと思った。
「お前、見せたら誰にも言わないんだな?」
声は低く、念を押すように硬かった。
村田の提案を受け入れるつもりはない。
だが、もし本当に見せることでこの秘密が守られるなら、それしか選択肢がないかもしれない。
純一のプライドはボロボロだったが、それでも完全に崩壊するよりはマシだと、彼は必死に自分を納得させようとしていた。
村田は純一の言葉を聞き、唇の端に意地悪な笑みを浮かべた。
その目は獲物を弄ぶような光を帯び、純一をじっと見つめている。
「へえ、見せてくれる気になりましたか、先輩?」と、彼は軽い口調で言ったが、その声にはどこか勝ち誇った響きがあった。
純一の心臓はさらに激しく鼓動し、手に持つタオルが汗で湿っているのを感じた。
彼は村田を睨みつけ、喉が締め付けられるような感覚を抑えながら、もう一度確認するように声を絞り出した。「
お前、見せれば本当に誰にも言わないんだな?」
その言葉は震えを帯び、必死さが滲んでいた。
プライドはすでにズタズタだったが、それでも秘密が漏れるよりはマシだと自分に言い聞かせていた。
村田は一瞬黙り、純一の顔をじっくりと見つめた後、ゆっくりと頷いた。
「もちろん、先輩。僕、約束は守りますよ」と、彼は柔らかく答えたが、その笑みは消えていなかった。
純一はその同意にわずかな安堵を感じつつも、胸の奥で渦巻く不安を拭えなかった。
でも、もう後戻りはできない。
彼は深呼吸をし、タオルを握る手に力を込めたまま、意を決してゆっくりとそれをどかし始めた。
タオルが滑り落ちる瞬間、彼の顔は真っ赤に染まり、視線は床に落ちていた。
村田にその部分を晒す――それは彼にとって、これ以上ない屈辱だった。
純一のそれは中学2年になっても毛も生えておらず、白く可愛らしいものだった。
村田の目が一瞬大きく見開かれ、わざとらしく驚いたような表情を浮かべた。
「おおっ、ほんとに見せてくれるなんて!」と、彼は声を上げ、純一のそれをじっくりと観察し始めた。
その視線は執拗で、細部に至るまで見逃さないように動いていた。
「へえ、意外と小さいんですね。色もちょっと薄い感じ? 形はまあ、普通かな。でも、先輩の体に比べてなんかアンバランスっていうか……」と、村田は次々と感想を言葉にし、わざとらしい驚きと興味を織り交ぜて純一をさらに追い詰めた。
純一は耳まで熱くなり、羞恥で体が震えそうになるのを必死に堪えていた。
純一は村田の言葉を聞くうちに、耐えきれなくなった羞恥が全身を駆け巡り、慌てて手で隠そうとした。
顔は真っ赤を超えて青ざめるほど熱くなり、指先が震えながらタオルを放した部分を必死に覆おうとする。
だが、その動きを見た村田が素早く手を伸ばし、純一の手首を軽く掴んで静止した。
「あ、先輩、ちょっと待ってくださいよ。まだちゃんと見てないですから」と、彼は穏やかな声で言うが、その口調には隠しきれない愉悦が滲んでいた。
純一の手は村田の力に抗えず、中途半端に止まったまま宙に浮き、彼の羞恥心はさらに深く抉られた。
その瞬間、更衣室の湿った空気に晒された純一のそれは、誰の目にも明らかな姿を露わにしていた。
小さく、控えめなその部分は、彼の引き締まった体躯とは不釣り合いなほど華奢で、色は薄いピンクがかった白に近い。
大きさは中学生の平均にも満たないほどで、形は丸みを帯びた幼さを感じさせるものだった。
毛は一本も生えておらず、皮をかぶり、滑らかな肌が無垢さを際立たせ、どこか未成熟な印象を与えていた。
水滴がまだ残る太ももとの対比で、その小ささが余計に目立ち、冷たいタイルの床に映る影さえ頼りなげだった。
村田は目を細め、純一のそれを再びじっくりと観察し始めた。
視線は執拗で、まるで科学者が標本を分析するかのように細部にまで及んだ。
「へえ、毛が全然生えてないんですね。ツルツルで……ほんと子供みたい」と、彼はわざと声を少し高くして驚きを装いながら言った。
純一の耳にその言葉が突き刺さり、彼の体は反射的に縮こまるように震えた。
顔は熱を持ち、額に冷や汗が滲み出し、唇は小さく震えて言葉にならない呻きを漏らしそうだった。
「なんか可愛らしい感じしますね。サイズもそうですけど、この無垢な感じが……いや、先輩にこんな部分があるなんて、ほんと意外です」と、村田はさらに言葉を重ね、観察結果を一つ一つ丁寧に口に出してみせた。
彼の声は軽く、楽しげで、純一の反応を楽しんでいることが明らかだった。
純一の心臓は激しく鼓動し、胸が締め付けられるような感覚に襲われていた。
村田の言葉の一つ一つが、彼のプライドを粉々に砕き、羞恥で体が燃えるように熱かった。
手で隠そうとした動きは村田に阻まれ、ただ両手が中途半端に震えながら宙をさまようだけだ。
頬はみるみる赤くなり、目は潤んで焦点が定まらない。
「やめろ……やめろって」と、彼は声を絞り出すが、その声は弱々しく、逆らう力さえ失っていた。
村田の静止する手に力はほとんど入っておらず、純一が本気で振り払おうと思えばできたかもしれない。
だが、彼の精神はすでに限界に近く、抵抗する気力すら奪われていた。
目をぎゅっと瞑り、現実から逃げるように顔を背ける。
瞼の裏に浮かぶのは、自分の完璧なイメージが崩れ落ちていく光景だけで、耳に響く村田の声がそれをさらに加速させていた。
体は硬直し、肩が小さく震え、喉からはかすれた息だけが漏れていた。
純一は目をぎゅっと閉じたまま、羞恥の波に飲み込まれていた。
瞼の裏は真っ暗で、そこに自分の崩れ落ちた姿だけが浮かんでいた。
顔は熱く、耳まで火照り、額には冷や汗が滲んで頬を伝う。
唇は小さく震え、歯を食いしばっても止められないほどだった。
村田の声が耳に残り、「子供みたい」「可愛らしい」という言葉が頭の中で反響し、彼のプライドを容赦なく踏みにじっていた。
それでも目を閉じていれば、少しだけ現実から逃げられる気がした。
だが、閉じた目では見えないはずの村田の視線が、下腹部に突き刺さるように感じられた。
その視線は鋭く、冷たく、まるで針のように純一の肌を刺し、隠しようのないコンプレックスを抉り続けていた。
誰にも見せたことのない、誰にも知られたくなかった部分を晒し、観察されている――その事実が、彼の心を屈辱で満たし、胸の奥で何かが軋むような痛みを生んでいた。
体は硬直し、肩が小さく震え、両手はまだ宙をさまよったまま、隠すことも抵抗することもできずにいた。
息は浅く、喉が詰まってかすれた吐息しか漏れなかった。
そんな純一の耳に、突然、カシャ、カシャ、という音が飛び込んできた。
聞き慣れた、乾いた電子音。最初はそれが何なのか分からず、頭がぼんやりとしたままだったが、次の瞬間、背筋に冷たいものが走った。
シャッター音だ。
純一の心臓が一瞬止まり、反射的に目を開けた。
瞼が重く、涙で滲んだ視界がゆっくりと焦点を結ぶ。
そこには、村田が立っていた。
にこやかな笑顔を浮かべ、片手にスマホを構えている。
画面は純一の方を向き、レンズが彼の下腹部を、いや全身を捉えているのは明らかだった。
村田の指が軽く動き、もう一度カシャと音が響く。
その瞬間、純一の体が凍りつき、顔から血の気が引いた。目が大きく見開かれ、瞳孔が震え、口が半開きのまま言葉にならない声が漏れた。
頭の中が真っ白になり、羞恥と恐怖が一気に爆発した。村田の笑顔は穏やかで、後輩らしい純粋さを装っていたが、その目の奥にはサディスティックな喜びが光っていた。
純一の震える手がようやく動き、隠そうとするが、すでに遅すぎた。村田はスマホを手に持ったまま、純一の反応をじっと見つめていた。
純一の顔は一瞬にして真っ赤に染まり、羞恥と怒りが爆発した。
「撮るな!」と声を荒げたが、その声は震え、どこか掠れて更衣室の湿った空気に虚しく響いた。目を見開いたまま村田を睨みつけ、額には汗が滲み、頬は熱で燃えるように紅潮していた。両手が慌てて下腹部を覆おうとし、指先が震えてうまく動かない。
心臓が激しく鼓動し、胸が締め付けられるような感覚に息が詰まった。
村田の手に握られたスマホが、彼の存在全てを脅かす凶器に見えた。撮られた――その事実が頭を支配し、プライドも理性も一気に崩れ落ちそうだった。
肩が震え、膝がわずかにガクガクと揺れ、喉からは言葉にならない呻きが漏れていた。
村田は純一の反応を見て、唇の端に穏やかな微笑みを浮かべたまま、まるで何でもないことのように軽く首を傾げた。
「記念撮影って大事ですよ、先輩」と、彼は柔らかい声で言ったが、その瞳には冷たい愉悦が宿っていた。
スマホを手に持ったまま、村田は画面を軽くタップし、「ほら、しっかり撮れてるでしょう?」と純一の方へ差し出した。
その動きはゆっくりで、わざと時間をかけて純一の焦りを煽るようだった。
純一の視線がスマホに引き寄せられ、画面に映し出されたものを見た瞬間、彼の体が硬直した。
そこには、顔を赤らめて目を閉じた純一が映っていた。
腰が無意識に突き出され、小さなそれが強調されるように正面から鮮明に捉えられている。
薄いピンクがかった色、毛のないツルツルした肌、丸みを帯びた形――全てが無慈悲なほどクリアに写し出され、背景のロッカーとタイルの床が現実感をさらに際立たせていた。
純一の表情は羞恥に歪み、閉じた目からは涙が滲んでいるようにさえ見えた。
写真の中の彼は、無防備で、惨めで、完璧なエースのイメージとはかけ離れていた。
村田はスマホを純一の目の前で軽く揺らし、画面を見せつけながらさらに言葉を重ねた。
「ねえ、先輩。この写真が学校のみんなに出回ったら、どうなりますかね?」と、彼は笑いかけるように言った。
声は軽く、楽しげで、まるで友達同士の冗談のような口調だったが、その言葉の重さは純一の心を抉った。村田の唇に浮かぶ笑みは穏やかさを装いつつも、どこか残忍な喜びに満ちていた。
純一の目がさらに見開かれ、瞳孔が震え、顔は赤から白へと色を失った。
息が荒くなり、喉が締め付けられて声が出ない。
頭の中で最悪のシナリオが次々と浮かび、スイミングスクールの仲間やクラスメイトの嘲笑が耳に響く幻聴さえ聞こえそうだった。
両手はおちんちんを隠したまま固まり、指の関節が白くなるほど力を込めていた。
村田はその反応をじっと見つめ、スマホを手に持ったまま、純一の崩れゆく姿を楽しむように微笑んでいた。
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